ボトムブラケット周りの音鳴り

最近、ペダリング時の「ボトムブラケット周りの音鳴り」の相談多いので、ちょっとポイントを整理してみました。実はなかなか難しい作業です。以下文中ではボトムブラケット=BB。

≪その①≫音が鳴る頻度

  • 常時鳴っている
  • 特定の条件で必ず鳴る
  • 時々、鳴る(鳴る時、鳴らない時がある)
  • ごく稀に鳴る

上から順に原因の特定が難しくなります。上2つなら、多く症例を見ている私であれば比較的容易に確認できます。下2つは私でも確認にかなり時間を要します。

≪その②≫音の原因

  • 故障に起因する音
  • 今後、故障に繋がる可能性がある音
  • 経年劣化(消耗)による音
  • 異常ではない仕方のない音(正常な音)

上から順に部品交換や修理対応の必要性が高くなります。上2つは対応必須、3番目の消耗はタイミングによって判断。4番目は、乗り物が走行すれば何かしらのノイズはありますので、ストレスになるようでしたら対策を考えればよいと思います。

≪その③≫音の場所

  • ボトムブラケット自体
  • ペダル
  • クランク
  • フレームそのものから
  • チェーンリングなど駆動系周り
  • リアホイール周り
  • シートポスト周り
  • ヘッド周り
  • シューズ
  • その他

ペダリング時にBB周りから…、と言った症状ですが、ペダリング時に負荷がかかる部品は上記すべてが関わってきます。自転車すべてといってもいいかもしれません。BBが原因でないことも多々あります。

そして、明確に原因が判断できればいいのですが、そうでないことも多く、その場合は、お客様の使用状況や音のなる条件などを問診的にお伺いして原因を予測して、また実際に私自身で試乗確認を行って判断していきます。

BBには様々な種類、サイズ規格があります。詳しくは過去ブログでBBの解説をしています。種類によって対策も違ってきます。

音鳴りの原因がBBと特定出来たら、
「分解洗浄/グリスアップ」して「再組付け」で解消できるか確認します。
ただし、BB自体は消耗品でもあるので、摩耗がひどい場合はBB交換も検討します。

構造的に音が鳴り易いとも言える「プレスフィットタイプ」。なかなか対策が難しいケースも…。

近年のカーボンフレームではフレームBBシェルにネジが切ってなくて、
圧入(プレスフィット)方式で固定しているタイプが主流になっています。
ネジの緩み⇒締めなおすことやグリスアップで対策ができますが、
プレスフィットの場合だと、交換しないと解消されないことが多かったりもします。

≪費用面、作業時間について≫

実費作業を基本とさせていただきます

店内作業での目視で判断可能~簡易的な試乗点検~本格的に実走してみないと判断が難しい、まで様々です。判別の難易度が高い場合やパーツ発注手配が必要な場合などがありますので、1~2週間のお預かり期間を前提にご相談いただけると助かります。

(最低点検費用6,600円/1時間当たり)×(試乗&作業に要する時間数)

+(必要な交換部品費用/パーツ代金+交換作業工賃)

例えば、点検(試乗確認時間など含む)時間、2時間程度なら6,600円×2=13,200円+パーツ交換代金5,500円で合計18,700円、といった費用の計算になります。

「ボトムブラケット規格」多過ぎ問題について

昔はボトムブラケット(以下、BB)規格は「JIS」?それとも「イタリアン」?で済んでました。90年台頃からMTBが流行り始めると「68㎜」「73㎜」「70㎜」のどれ?。キャノンデールが「SI(システムインテグレーション)」を提唱してBB30が登場して、「?」となって、他メーカーが次々と追随して、「フレームメーカー独自規格」が多数存在するようになって昨今、まさにBB規格は「??????…」な理解不能状態の方も多いのではないでしょうか。

具体的な規格の解説は、メーカーサイトや解説本などがありますので、そちらに任せるとして、今回は少しBB規格問題について論じてみたいと思います。

すべてが近年に始まったわけでなく、昔でもゲーリーフィッシャーやクラインが独自規格のBBを採用していたり、BMXやビーチクルーザーなどは独自のサイズ規格で成り立っています。

なぜ、BB規格にこだわるのかを紐解くと、クランクとの関係が密接に影響してきます。乗り手のパワーを自転車に伝えるために非常に重要なパーツの一つがやはりクランクです。クランクを軽量で高剛性な物にするため、中空構造で大口径化がされたことがフレームのBB規格独自化の最大の理由でしょう。

従来の□(四角)テーパー軸のBBでは軽量かつ高剛性に仕上げるにはどうしても限界があります。ということでBB軸がなくなって、クランク自体にBB軸を組み込んでしまったのです。過渡期では□テーパー軸でなく、BB軸の径を大きくした嵌合式のテーパー軸BBなどもありましたね。

・シャフト(軸)は部品としてBBの一部

・シャフト(軸)は部品としてクランクの一部

現在では、仕様によって、まずここで大きく分類されますね。ハイエンドな商品では、ほとんどがクランク側にシャフトがあります。廉価版普及モデルだったり、クラシカル路線以外ではこの構造が主流です。

また、技術の進歩でひと昔前に比べると、フレームの進化は著しいものがあります。進化したフレームの性能を最大限生かすためにフレームメーカーにとってもBBの規格は重要なポイントです。せっかく高剛性のいいフレームを作ってもクランク&BBの剛性が落ちると、せっかくのフレームの性能をスポイルしてしまいます。そこで「SI」コンセプトのように、クランク&BBをフレームの一部として設計する発想が生まれてきたわけです。さらに、メリットとして、フレームのBBスレッド(ネジ切構造)を失くしてプレスフィット(圧入構造)化することによって、「軽量化しやすくなったこと」や「Qファクター設計の自由度があがった」などがあります。カーボンのロードではこのプレスフィットBBがもはや完全に主流ですね。

と思っていたら、最新規格ではT47といったPF30規格フレームにネジ切をしたようなものも出てきて、なんか一周回ってきました。軋みやすいプレスフィットの弱点を補った上で大口径化が狙いだとは思いますが…。「?」は永遠に続きます。

フレームメーカーにとってはフレームのパフォーマンスを活かすためには最適化したBB周りの付属部品が求められます。また、部品メーカーにとっても、クランクのパフォーマスを最大限活かすためには専用のBB構造が必要になるといった発想になるのは当然です。時代の変化として、最新ハイエンドバイクでは、「自分で部品をアッセンブルして自転車をアレンジする」ではなく⇒「最適化されたパーツ構成の完成された自転車をメーカーが供給する」といった流れなのかもしれません。個人的にはつまらないと思うところもありますが、とくにコンペティティブなロードの世界では合理的な発想なので当然の流れだと思います。

パーツ変更や新しいパーツの導入の際に必要になってくる知識としては、ひとまずは以下の点を押さえておいてください。メーカー規格の名称で判断もできますが、図の3か所の実際の形状&数値と「クランク (モデル名) の種類(…シャフト長も違います)」とで基本的には判断できる場合が多いです。

各社よりさまざまなコンバーターBBがラインナップされていますが、中には組み合わせが不可能なケースもありますので、その点はご注意ください。

正直言ってお店の工具、設備投資も大変です。

当店の対応状況は95%くらいだと思います。すべてのBBの作業が来てすべてにすぐ対応出るとは言い切れませんが、ほぼ何とかなる準備はしているつもりです。

次回は「ヘッドセット規格」多過ぎ問題…です。(かもしれません)

その次は「エンド幅」問題…、と続くかもしれません。

BB交換作業工賃…3,500円(税抜) ※スタンダードなネジ切りBB場合の料金/プレスフィット系は5,000円~が目安。