「外装ギア」と「内装ギア」の違い

それぞれの特徴やメンテナンス上の注意点を解説していきたいと思います。合わせて今日の市場で一般車(=シティサイクル、いわゆるママチャリ)に外装ギアの自転車多くなった背景について解説を少し。

「外装ギア」「内装ギア」って何?

変速ギア付きの自転車には大きく分けて「外装ギア」タイプのものと「内装ギア」タイプのものがあります。

「外装ギア」

ロードバイクやクロスバイクなどのスポーツ車に多く見られるこういった外側に多数のギアの歯車や変速機(ディレイラー)などが見られるタイプが「外装ギア」。

「内装ギア」

一方、一般車でよく見かけるのが「内装ギア」。手元に「1・2・3」段の切り替えレバーがあるけど、外装ギアのように外側にはギアっぽい部品が無いこういったタイプ。遊星ギアと呼ばれる構造が後ろ車輪の中心(ハブ)の中に組み込まれています。

外装ギア仕様の一般車

「外装ギア」=「スポーツサイクル」、「内装ギア」=「ママチャリ」、が主流かと言うと最近はそうでも無くて、上写真のようなカゴ付きの普通のお買い物ママチャリにも「外装ギア」仕様の自転車が多く市場に出回っています。

「内装ギア」部品は日本国内では「シマノ社」製品のシェアが高く、ほとんどの一般車の内装ギアはシマノの製品です。それなりに高価な構成部品で車体価格もギア無しの自転車に比べてその分のコストが反映されます。

さらに原材料価格の高騰等の影響を受けて「シマノ内装ギア」部品がここ数年で大きく値上がり。そこで車体の販売価格を抑えるため、比較的廉価な一般車向け「外装ギア」部品を採用する自転車メーカーが増えました。

走りの軽さスポーティさを求めて一般車に外装ギアが装備されているというよりは「コスト面」からの理由で採用されている業界事情がその背景にあるようです。

そこで、問題になるのが…

「外装ギア」にはメンテナンスが不可欠

といった現実に直面するわけです。

スポーツサイクルのユーザーであれば日常的にメンテナンスの意識も高く、チェーンの注油や変速調整の必要性を理解されている方も多くそれほど心配はいりません。一方、普段使いのママチャリとなると、残念ながら「外装ギア」だと管理不足からくる錆び・ギア部品の摩耗によるトラブルが多く見られます。

チェーンの著しい錆びが原因のギアの摩耗、変速ケーブルの劣化、ディレーラーハンガーの変形、等々のトラブル

それぞれのギア特徴をみてみましょう

赤マルの理由から「外装ギア」が一般車にも採用されていますが、本質的にはスポーツサイクル向けなので日常のメンテナンスが必要不可欠な側面も…

価格に関しては、車種カテゴリー別に様々な商品があります。スポーツサイクル向けの商品群(高価)>一般車向け商品群(安価)が大前提ですが、一般車商品群だけに限定して云えば、外装ギアの方が構成部品として比較的安価です。また、この安価な一般車商品群の外装ギアは安い車体価格(3~4万円以下クラス)のスポーツサイクルにも多く使われています。

走行性からすれば「軽くて速く」がスポーツ車向け、メンテナンス性(日常の維持管理)からすれば「手間のかからない」が一般車向け、といった選択肢になるでしょう。ただ、実際にはそこがいろいろとクロスオーバーしている車体が販売されている実情があります。

基本的なメンテナンスのポイント

「外装ギア」は外側にギアが剝き出しの状態ですので塗布されているオイルが落ちやすい。

そのため「外装ギア」に関してはとにかく定期的な掃除&注油が必須。錆びさせないことが重要です。ギア周りの錆びは時間が経ってしまうと落せません。チェーンオイルには防錆&滑らかな駆動の重要な役割があります。月1回の注油頻度が理想。

普段使いの場合はなかなかそうはいかないかもしれませんが、保管方法も重要。日常的に雨風にさらされる場所だと錆びが発生しやすい。そういった保管場所の方は注油頻度を多くした方が良いでしょう。

チェーンへの注油は自宅で自分でもできるメンテナンスのひとつです/ぜひ習得しましょう

一方、メンテナンスフリーな構造のイメージの「内装ギア」ですが、本来は定期整備が必要です。(←意外と知られていないですが…)こちらは分解を伴う専門的な知識が必要になりますのでショップに相談するのが基本。年に1度の定期点検実施時などに相談するのがよいでしょう。

ちなみにシマノのマニュアルに沿った運用であれば、「内装ギア」の専用オイルでの整備頻度は「使用開始から1年ごと(頻繁に乗車する場合は2,000㎞ごと)」と指示されています。

シマノ内装ギアの内部の部品構造/専用メンテナンスオイルがあります(写真の液体)

いずれも長く良い状態で自転車を乗り続けるためには大切な整備ポイントです。

ギア周りの整備全般、少し手間はかかりますが、しっかりと行いましょう

シフトインナーケーブルの種類

代表的な消耗パーツ「シフトケーブル」。特にロードバイクユーザーであれば、やはり定期的な交換を心がけましょう。

現行モデルのシマノSTIレバーのシフトケーブルの取り回し。この部分で直角にインナーケーブルが曲がるルーティングになっています。一番負担がかかりやすく摩耗し易い場所です。シフト操作に違和感がある場合、ほつれたりしていないか点検をしましょう。

最近はハイエンドのロードバイクだとシマノ「Di2」など電動変速が主流になりつつありますので、シフトケーブル交換が必要のないバイクも多くなっています。この変速システムの電動化の時流ともにラインナップが増えてきたのが「コーティングタイプ」シフトインナーケーブルです。電動システムの変速性能に引けを取らないようにワイヤーのスムーズな動きを追求した特殊なモデルが使われています。

現行シマノ・ロードコンポーネントの場合、

デュラエース&アルテグラ…ポリマーコーティング

105、ティアグラ、ソラ、クラリス…オプティスリックコーティング

が標準で採用されています。いずれもアウターケーブルはグリスが入った「OT-SP41」が対応。

※完成車の場合は社外品ケーブルなど標準仕様と異なるアッセンブルもあり

※コーティングタイプはコンポの年式(旧型など)によっては使用できない場合もあり

当店のセットメンテナンスA/B/C各コースでは消耗品交換を実施しますが、その中にはもちろんシフトケーブル交換作業も含まれます。基本料金内ではシマノ製のスタンダードな「ステンレススティール」シフトインナーケーブルでの交換作業になります。

スタンダードなシマノ/ステンレス以外のシフトケーブルを使用する場合は別途アップチャージがかかります。具体的な費用は個別にお見積もりをさせていただきます。

<シマノ公式サイトからの資料>

シマノの3種類のシフトインナーケーブルの特徴

シマノ「ステンレススティール」

■エントリーロードやクロスバイクユーザー、古い年式のロードバイクユーザーでは定番の「ステンレススティール」。上位コンポユーザーの方でもランニングコストを考慮して使っている方もいます。安いけど非常に良いケーブル。

シマノ「オプティスリックコーティング」

■青みがかったコーティングが特徴。耐久性に優れた均一でごく薄い電着コーティングが施された「OPTISLICKケーブル」により、ケーブル効率性が向上し優れた耐腐食性を実現。値段もお手頃。シマノの中ではミドルグレードといった感じ。

シマノ「ポリマーコーティング」

■うす茶色の新素材「ポリマーコーティング」がインナーケーブルにらせん状に巻かれてケーブル内のグリースが長期にわたり保持されます。軽くて素早いシフティング操作は抜群ですが値段が高価、また構造上どうしても定期的な(マメな)交換は必須です。

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大阪のケーブル専門メーカー「日泉(ニッセン)」

日泉ケーブル「SP31スペシャルステンレスインナー」

カスタムパーツとして人気があります。変速操作時の引きの軽さで評判も高く耐久性も信頼できます。アウターケーブルのカラーリングも豊富で個性的です。ヴィンテージバイク向けアイテムもラインナップあり。

カンパニョーロのユーザーの方へ

「シマノ」と「カンパニョーロ」では規格が異なります。カンパの方がタイコ部分がひと回り小さい。

シマノ用は使えませんので、カンパ純正or対応のサードパーティ製での交換になります。セットメンテナンスコース時にはアップチャージが必要になります。

『ディレーラー調整の講習会』開催

2021年7月追記:「講習会」形式のワークショップは廃止しました。現在は「プライベートレッスン」形式で承っております。詳しくはコチラ

初心者からベテランの方まで、変速調整の疑問にお答えします。

日時:3月8日(日) 9:30~ (90分程度

今回は開店前の時間で店内PITスペースにて行います

講習内容:ディレーラー調整など変速調整全般の基礎講座

参加費:2,000円(税込み)

定員:数名程度まで(1名様でもお申し込みがあれば開催します)

申し込み方法:事前にご来店もしくはお電話等でお申し込みください

『自分で変速の調整をすると、どうもうまくいかない…』そんな不安がある方から『変速の調整方法が全く分からない』といった初心者方までを対象にした講習会です。ディレーラーの基本構造、具体的な調整方法、よくあるトラブル、日常の点検、などを実際にご自身で作業をしてもらいながら学んでいただきます。初心者でもわかる内容で行いますが、ベテランの方でも作業のコツなどプロのテクニックを学べる機会ですので、復習・確認のために参加していただいてもいいかと思います。 また、ご自身の自転車をお持ち込みいただければ、より具体的な調整のポイントをアドバイスします。

変速(シフト)調整の方法、続編②

前回の内容はコチラから。

変速(シフト)の調整方法の続編です。今回はリアディレーラーの『調整ボルト(ネジ)の役割』について理解していきましょう。

実際の調整方法のコツなども今後アップしていく予定ですが、今回も前回に続いて基礎講座編です。急がば回れで、シフトの調整方法を習得するには、まずはディレーラーの構造をしっかりと理解することが重要です。「最初にこのネジを締めて、次にこのネジを…」と覚えるよりも、「このネジを締めるとこういう状態になる」と理解してもらった方が調整方法をマスターする近道だと思います。

リアディレーラーには次のような4つの調整ネジがあります。上から順番に下の図のように配置されています。

わかりやすい図にしてありますが、実際にはタテにきれいに並んでいるわけではありません。位置関係の目安としてみてください。実際には下の写真のような感じです。

スタンダードなリアディレーラーだと実際はこんな位置関係

ただ、必ずしも上からこの順番とも限りません。下の写真のようなケースも一部のモデルではありますので、マニュアル等で確認してください。

最近はこんな仕様もありますが、調整方法の要領は基本的に一緒です
それぞれのボルトの位置を把握することが重要です

それぞれのボルトの役割は…

  1. Bテンション調整ボルト…ガイドプーリー(上側にある歯車)とスプロケットの間隔を調整するためボルトです。基本最初にセッティングされていれば、日常の微調整ではあまり使用しない箇所です。
  2. トップ側ストローク調整ボルト…トップ側にチェーンが外れなくする役割のボルトです。
  3. ロー側ストローク調整ボルト… ロー側にチェーンが外れなくする役割のボルトです。
  4. ケーブル調整ボルト…ケーブル(ワイヤー)の張り具合(テンション)を調整するボルトです。前回、説明した「綱引き」のバランスをとるための調整ボルトです。日常の微調整ではココを調整することが一番多いかと思います。

How to本などを読むと「トップ&ロー側ストローク調整ボルト」がメインの調整と理解してしまうことがあります(間違った理解ではありませんが…)。実際の場面では、ショップで整備された状態で使用開始⇒しばらくは問題なく快調に変速⇒変速の動きが悪くなった、というケースが多く、その場合には1~3のボルトでの調整が必要な場合は少なくて、ほとんどが4.ケーブル調整ボルトの調整だけで済むことが多いです。いわゆる、「初期伸び」等によるケーブルのテンションのズレが原因の不具合です。もちろんすべてがそうとは限りませんが、ケーブル調整ボルトでテンションを上げてあげれば、簡単に直ってしまいます。

「トップ&ロー側ストローク調整ボルト」 それぞれの役割が間違って理解されていることが、初心者の方にけっこう多く見受けられます。それぞれのボルトの役割を模式的に表現すると次のような図になります。

リアディレラーのトップ側に動く範囲を決めるネジ
リアディレーラーのロー側に動く範囲を決めるネジ
この2つのネジはトップギアとローギア以外では機能していない

それぞれのストローク調整ボルトは、リアディレーラーの動く範囲の一番外側と一番内側に影響を与えているだけです。ちなみにフロントディレーラーでも同じ理解でOKです。この構造の理解をしっかりとしていただけると、シフト調整のコツがつかみやすくなると思いますよ。

変速(シフト)の調整方法、いろいろ

シフト調整って難しい…?

何となく、ハードルの高いイメージのある作業の1つがシフト調整ではないでしょうか。フレームのエンド修正が必要な場合は別ですが、基本的にはプラスドライバーや六角レンチ等があれば調整できる特殊工具を必要としない作業です。でも、何だか複雑な構造で難しそう…、というイメージを持っている方が多いかと思います。

自転車の変速機は模式的に表現するとこんな感じに自転車に取り付けられています。

シフター(変速レバー)でケーブルを引っ張って(ケーブルを巻き取るイメージ)、ディレーラー(変速機)を動かしている構造です。

ディレーラー側にはバネがあって、引っ張られるとこのバネが伸ばされる構造になっています。そして、シフター側で引っ張ているケーブルを再び緩めるとバネの縮む力でディレーラーが元の位置に戻ります。

インナーケーブル』を使って、『シフター』と『ディレーラー』が綱引きをしている構造です。この綱引きのバランスを調整することがシフト調整です。

通常、まったく引っ張られていない状態ではディレーラーはリアの場合トップギア側(フロントだとインナー側)にあります。シフターでケーブルを矢印の方に引っ張ると、ディレーラーが引っ張られて、

矢印の方に動いてローギア側(フロントだとアウター側)の位置に移動します。

そして、ディレーラーにはチェーンが通っていますので、この動きを利用して、チェーンを移動させて変速を行うことがディレーラーの役割です。

この動きを最適化するために、ケーブルの張り具合をアジャストする『ケーブル調整ボルト』を使って綱引きのバランスをちょうどいい位置にしてあげます。変速不具合の原因としてよくある、いわゆる「ケーブルの伸び」に対する調整です。※一般的にこの作業レベルで済む調整を前提に、当店ではシフト調整作業工賃を1か所/500円で設定しています。

ただ、工賃表が500円『~』という表示になっているのは、変速の不具合は複合的な要因があるので、一概にケーブルの張り具合だけでは改善されないケースが多いのも現実です。状態を拝見せていただいて、個別にお見積もりをしております。

他にも複数の調整ネジ(Bテンション調整ボルト、トップ&ロー側のそれぞれのストローク調整ボルト)がディレーラー側にはありますので、それらの構造を理解しないと正しいセッティングはできません。もちろん変速機そのものの取り付け位置も重要です。この辺りの内容はまた別の機会で、投稿しようかと思っています。

また、このようなスタンダードな外装モデルではなく、内装だったり、電動変速だったり、ローノーマルのリア変速機だったり、個別にセッティングが異なるケースがけっこうあります。

やっぱり、シフト調整って、難しい…。かもしれません。

※現在、初心者向け基本的なシフト調整方法の講習会を企画中です。近いうちに開催予定です。日程等、決まりましたら、あらためてご案内いたします。