「ボトムブラケット規格」多過ぎ問題について

昔はボトムブラケット(以下、BB)規格は「JIS」?それとも「イタリアン」?で済んでました。90年台頃からMTBが流行り始めると「68㎜」「73㎜」「70㎜」のどれ?。キャノンデールが「SI(システムインテグレーション)」を提唱してBB30が登場して、「?」となって、他メーカーが次々と追随して、「フレームメーカー独自規格」が多数存在するようになって昨今、まさにBB規格は「??????…」な理解不能状態の方も多いのではないでしょうか。

具体的な規格の解説は、メーカーサイトや解説本などがありますので、そちらに任せるとして、今回は少しBB規格問題について論じてみたいと思います。

すべてが近年に始まったわけでなく、昔でもゲーリーフィッシャーやクラインが独自規格のBBを採用していたり、BMXやビーチクルーザーなどは独自のサイズ規格で成り立っています。

なぜ、BB規格にこだわるのかを紐解くと、クランクとの関係が密接に影響してきます。乗り手のパワーを自転車に伝えるために非常に重要なパーツの一つがやはりクランクです。クランクを軽量で高剛性な物にするため、中空構造で大口径化がされたことがフレームのBB規格独自化の最大の理由でしょう。

従来の□(四角)テーパー軸のBBでは軽量かつ高剛性に仕上げるにはどうしても限界があります。ということでBB軸がなくなって、クランク自体にBB軸を組み込んでしまったのです。過渡期では□テーパー軸でなく、BB軸の径を大きくした嵌合式のテーパー軸BBなどもありましたね。

・シャフト(軸)は部品としてBBの一部

・シャフト(軸)は部品としてクランクの一部

現在では、仕様によって、まずここで大きく分類されますね。ハイエンドな商品では、ほとんどがクランク側にシャフトがあります。廉価版普及モデルだったり、クラシカル路線以外ではこの構造が主流です。

また、技術の進歩でひと昔前に比べると、フレームの進化は著しいものがあります。進化したフレームの性能を最大限生かすためにフレームメーカーにとってもBBの規格は重要なポイントです。せっかく高剛性のいいフレームを作ってもクランク&BBの剛性が落ちると、せっかくのフレームの性能をスポイルしてしまいます。そこで「SI」コンセプトのように、クランク&BBをフレームの一部として設計する発想が生まれてきたわけです。さらに、メリットとして、フレームのBBスレッド(ネジ切構造)を失くしてプレスフィット(圧入構造)化することによって、「軽量化しやすくなったこと」や「Qファクター設計の自由度があがった」などがあります。カーボンのロードではこのプレスフィットBBがもはや完全に主流ですね。

と思っていたら、最新規格ではT47といったPF30規格フレームにネジ切をしたようなものも出てきて、なんか一周回ってきました。軋みやすいプレスフィットの弱点を補った上で大口径化が狙いだとは思いますが…。「?」は永遠に続きます。

フレームメーカーにとってはフレームのパフォーマンスを活かすためには最適化したBB周りの付属部品が求められます。また、部品メーカーにとっても、クランクのパフォーマスを最大限活かすためには専用のBB構造が必要になるといった発想になるのは当然です。時代の変化として、最新ハイエンドバイクでは、「自分で部品をアッセンブルして自転車をアレンジする」ではなく⇒「最適化されたパーツ構成の完成された自転車をメーカーが供給する」といった流れなのかもしれません。個人的にはつまらないと思うところもありますが、とくにコンペティティブなロードの世界では合理的な発想なので当然の流れだと思います。

パーツ変更や新しいパーツの導入の際に必要になってくる知識としては、ひとまずは以下の点を押さえておいてください。メーカー規格の名称で判断もできますが、図の3か所の実際の形状&数値と「クランク (モデル名) の種類(…シャフト長も違います)」とで基本的には判断できる場合が多いです。

各社よりさまざまなコンバーターBBがラインナップされていますが、中には組み合わせが不可能なケースもありますので、その点はご注意ください。

正直言ってお店の工具、設備投資も大変です。

当店の対応状況は95%くらいだと思います。すべてのBBの作業が来てすべてにすぐ対応出るとは言い切れませんが、ほぼ何とかなる準備はしているつもりです。

次回は「ヘッドセット規格」多過ぎ問題…です。(かもしれません)

その次は「エンド幅」問題…、と続くかもしれません。

BB交換作業工賃…3,500円(税抜) ※スタンダードなネジ切りBB場合の料金/プレスフィット系は5,000円~が目安。